研究概要 |
前年度までの解析で、骨髄移植後のHHV-6分離例、非分離例についてそれぞれ末梢血単核球、血漿中のウイルスDNA量のモニタリングを行い、末梢血単核球中でのmolecular reactivationの存在を明らかにした。今年度は、ウイルス再活化とacute GVHDとの関連性を明らかにするため、ウィルス分離例と非分離例での末梢血単核球中の各種サイトカイン遺伝子発現解析を行った。3種類のpro-inflammatory cytokines (TNF-α,IL-6,IL1-β)遺伝子発現をreal-time PCR法を用いて解析するため、基礎検討として以下のような実験をおこなった。各遺伝子発現の定量は、Applied Biosystems社のPre-developed TaqMan reagentsを使用し実施、各検体についてβ-actin遺伝子発現も同時に測定しその比を求めることによりcytokine遺伝子発現量を比較した。まず5名の健康成人単核球を採取、無刺激の単核球(1×10^6、1×10^4、1×10^2)とIL-2、PHA存在下の液体培地で24、48時間培養後採取した単核球(1×10^6、1×10^4、1×10^2)について3種類のcytokines遺伝子発現を解析した。その結果β-actinとの比を取ることにより、無刺激、刺激後ともに単核球数によってcytokine遺伝子発現量に差はなく、本方法によって単核球数の異なる臨床検体を用いても正確な評価が可能と考えられた。また無刺激の単核球に比べ24あるいは48時間刺激後の単核球において各cytokine遺伝子発現は亢進しており、この実験系はこれらのcytokine遺伝子発現解析に適切な方法と思われた。現在ウイルス分離例10例と非分離例10例について移植後経時的に採取した単核球からRNAを抽出しcDNA合成を行っている。さらに、骨髄移植患者の検体量は少ないため、この実験系に習熟する意味も兼ねて十分な検体量が得られているhypersensitivity syndromeの患者で、HHV-6分離例2名と非分離例6について単核球中のpro-inflammatory cytokines遺伝子発現を解析した。その結果、これらの患者においては、HHV-6分離群と非分離群で明らかな遺伝子発現の差は見出されなかった.
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