1.DMN投与によるラット肝障害モデルにおけるLSKLペプチド腹腔内投与の有効性についての検証:昨年度に行った、肝細胞におけるTGF-β1活性化抑制に伴うSmad2リン酸化シグナル低下の検証をデータとして追加し、J.Hepatolに投稿。同誌39(2003)742-743に掲載された(Title : A blocking peptide for transforming growth factor-β1 activation prevents hepatic fibrosis in vivo.)。 2.LSKLの経胃投与モデルによる肝障害抑制効果の検討:DMN肝障害ラット体重100gあたり1mg(腹腔内投与量の約10倍量)のLSKLを2週間経胃投与を行った。2週間後の体重、肝組織中ヒドロキシプロリン量、および肝組織像での評価を行ったが、LSKLの経胃投与群と対照群との間に有意な差は認められず、LSKLの経胃投与での有効性は認められいとの結果を得た。その原因として生体材料との混和により本テトラペプチドが速やかに分解されてその活性を失うことが考えられた。 3.LECラットに対するLSKLペプチド投与による発癌抑制効果の検討:肝障害・発癌モデルとしてのLECラット(20週齢)に対してペプチドの長期経口投与実験(56週間、76週齢まで)を行った。その結果、LSKL投与群(n=3)のうち1匹が56週投与終了まで生存し、2匹は投与6週、46週で死亡した。SLLK群(n=2)は投与2週、18週で死亡し、飼育水のみの群(n=2)は1匹が投与終了まで生存し、1匹は投与5週で死亡した。LSKL、および飼育水で投与終了まで生存した2匹の肝には、いずれも結節状の癌腫瘤が多発しており、本実験系においてはLSKL投与による慢性肝障害予防あるいは発癌抑制効果信認められなかった。 <総括>本研究により、LSKLが肝障害および線維化の進行をTGF-β活性化抑制機序により有意に抑制することが検証されたが、生体材料との接触によって容易に分解されてしまうためにペプチドの経口投与は有効でないことが明らかとなった。今後、肝疾患への臨床適用のためには、本ペプチドの生理活性の有機化合物化が必要と考えられる。あるいは、肺線維症に対する吸入投与などの異なった臓器に対する異なった投与経路での適用に期待が持たれる。
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