研究概要 |
【はじめに】IGF-I受容体のKOマウスでは、出生体重が標準体重の45%と報告されている.このことは,原因不明の胎内発育不全に伴う低身長児(IUGR性低身長)の中に,IGF-I受容体の異常症が含まれている可能性を示唆する.私達は原因不明のIUGR性低身長児を対象にIGF-I受容体(IGFI-R)遺伝子の解析を行った. 【対象と方法】出生体重が-1.5SD以下で,3歳以降も-2SD以下の低身長を呈した25例を対象とした.末梢血単核球DNAを抽出後、IGF 1 R遺伝子のExon1〜21およびその近傍のintronについて設定したプライマーPCRで増幅後、direct sequence法で遺伝子を解析した. 【結果】EX1の5'UTR部分に4bpのdeletion(977-980de1CTTT)を1例に認め,ヘテロのsilent mutationがEX3(204CCC/CCT)に1例,EX11(736ACC/ACT)9例,EX16(1012GAG/GAA)13例,EX21(1316TAC/TAT)2例に認められた.また,EX11に存在するIGF-I受容体のα鎖とβ鎖のcleavage siteにArg709Glnをヘテロで認めた。この症例の母親もIUGR性低身長と診断され,同様の変異をヘテロで認めた。母親の赤血球を用いた^<125>I-IGF-1による、Scatchard解析では、IGF-I結合能の低下を認めた。また,EBウイルスを用いて不死化した患児のリンパ球は健常人のそれに比較して著明な増殖の遅延を認めた(健常人の16%). 【考案】本研究で認められたIFGI-R遺伝子のcleavage siteのArg709Glnは,種を越えて保存されている部分であり,IGF-IR遺伝子と極めて類似した構造を持つインスリン受容体遺伝子でも同様の報告がなされており,IUGR性低身長の原因の可能性が考えられる.次年度,組込み実験による本異常遺伝子の機能解析を行う予定である.
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