研究概要 |
【目的】軟骨無形成症(ACH)を代表とするFGF receptor3(FGFR3)関連疾患の骨成長障害は、恒常的活性型FGFR3が軟骨細胞の増殖を抑制するためである。最近、私達は細胞実験で、軟骨細胞の分化促進によりアポトーシスが過剰に起こっていることもその一因であること、さらにPTHがこのアポトーシスを抑制することを報告した。今回、PTHの骨伸長促進作用の治療への応用を目的とし、器官培養系を用いて検討を行った。 【方法】1)マウス胎仔大腿骨に,FGFR3の野生型(Ad-WT)、致死性骨異形成症II型(TDII)の変異(Ad-TD)を各々組み込んだアデノウイルスベクター(MOI 18)を2.5日間暴露、感染させた後、血清非含有のメディウムで培養を行い、培養前と培養3日後、6日後に各々の骨長を測り、増加率を比較検討した。2)Ad-WTに感染させた骨にPTHを添加し、骨の骨伸長増加率についてPTH非添加の骨と比較検討した。3)軟骨無形成症モデルマウスより採取した大腿骨を1,2)と同様に検討した。 【結果】1)Ad-WTに感染させた骨の長軸方向への増加率を100%とすると、Ad-TDの増加率は、培養3日目に32.9±10.5%、6日目に66.9±14.4%と有意に抑制されていた。(P<0.05) 2)PTHを添加したAd-WTの骨において、骨長の増加率は、非添加の骨と比較し、培養3日目で1.2倍(p=0.036)、培養6日目で1.16倍(p<0.01)であった。軟骨無形成症モデルマウスより採取した大腿骨を用いた検討でも同様の結果が得られた。 【結論】器官培養系においてもFGFR3の変異が骨成長を抑制することが確認され、PTHの骨伸長作用が期待できた。PTHが軟骨無形成症群の骨成長障害に有効である可能性が示唆された。
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