研究概要 |
1.X連鎖性知的障害を推測される患者とその家族の臨床症状、DNA材料の確保、細胞株の樹立と遺伝子解析 遺伝相談により上記疾患を疑い、遺伝解析と行った。その結果、(1)滑脳症と脳梁無形成を伴う兄弟例の疾患責任遺伝子はXp22に位置するARX遺伝子であり、祖父の精子における新鮮突然変異に由来する変異であることが証明された。(2)知的発達障害を主な症状とする男児の家系調査を行い、1家系の3兄弟と母親による遺伝子連鎖解析の結果、責任遺伝子はXq24領域以外には存在しないことを明らかにした。しかし、家系員が少なく、ロッド値は2を超えることが出来ないことから、本家系における知的障害は常染色体性優性遺伝による可能性も否定できなかった。(3)5例のWest症候群の男児患者において、白人に同定されたARX遺伝子解析を行ったが遺伝子変異は同定されなかった。 2.Rett症候群患者における遺伝子解析 全国の小児神経医から臨床症状より診断されたRett症候群患者とその両親の血液を集積し、遺伝子解析を行った。その結果(1)解析した245例中methyl-CpG binding protein 2 (MECP2)変異の同定された患者は146名(59.6%)であった。しかし、典型的な臨床経過を伴った患者では90%に変異が検出され、T158M, R168X, R255X, R270X, R294Xの頻度が高く、報告のない新しい変異も同定された。(2)非典型的な臨床経過を伴う患者中、R133CのMECP2変異を伴う患者は言語機能や手の機能が比較的良く保持されたpreserved、speech variant型を示した。(3)家族性にMECP2変異のR133Cが同定され、変異遺伝子のみの男児の臨床症状は典型的Rett症候群であった。従来、Rett症候群の男児例の存在は疑問視されていたが、R133Cの女児における軽症型の変異は男児に典型的Rett症候群を発現することが明らかとなった。(4)2卵生双生児におけるMECP2遺伝子解析を行い、臨床症状を伴った女児においてのみ変異を同定した。そこで、2人の発育、発達を比較した所、1歳頃から自閉傾向と発達の遅れが明らかで、早期診断の可能性が示唆された。(5)Rett症候群の早期診断のために臨床診断基準を作成し、2歳までにRett症候群の疑われた13例においてMECP2解析を行った結果、6例に変異が同定された。そこで、変異の有無と臨床症状との組み合わせを用いて早期診断基準を作成した。 3.てんかん、知的障害の遺伝子解析 成人型ミオクローヌスてんかんの責任遺伝子領域に新しい遺伝子を単離し、DNA配列と構造を明らかにした。白人のWeaver症候群の責任遺伝子であるNSD1遺伝子変異が3人の日本人患者では同定されないことから、Weaver症候群には遺伝的異質性のあることが示唆された。
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