研究概要 |
国産の新規ウイルスベクターである組み換えセンダイウイルスベクター(SeV)を用いたヒト多能性造血幹細胞(pluripotent hematopoietic stem cell, PHSC)への遺伝子導入システムを樹立するために、細胞毒性の弱い次世代SeVを用いた遺伝子導入をin vitroで解析するとともに、遺伝子導入されたヒトPHSCをNOD/SCIDマウスに移植するin vivoの系で付加型SeVと比較し、以下の結果を得た。 1)SeV/M^<ts>HN^<ts>ΔFは、F蛋白欠損に加えて、M蛋白およびHN蛋白に温度感受性変異(ts)を有する新しいSeVであり、これまで使用してきた付加型SeVよりも細胞毒性の少ないベクターとして開発された(Inoue M et al. J Virol 77:3238-46,2003)。SeV/M^<ts>HN^<ts>ΔFを用いてヒト臍帯血由来CD34^+細胞(CB-CD34^+)への遺伝子導入を行ったところ、遺伝子導入効率は付加型SeVと同様約85%程度であり、遺伝子導入された細胞では量依存性の増殖抑制がみられたものの、その程度は付加型SeVよりも軽度であった。 2)SeVによりGFP遺伝子を導入したCB-CD34^+をNOD/SCIDマウスに移植し、3〜4週間後に解析したところ、骨髄細胞中のヒトCD45^+細胞の割合(生着率)の平均は、対照62%,付加型SeV 0.6%,SeV/M^<ts>HN^<ts>ΔF 1.2%であり、生着したヒトCD45^+細胞におけるGFP陽性率は、付加型SeVでは0%、SeV/M^<ts>HN<ts>ΔFでは34.6±13.3%であった。 以上の結果より、SeV/M^<ts>HN^<ts>ΔFをCB-CD34^+への遺伝子導入ベクターとして用いた場合、付加型に比べて細胞毒性が軽減されているが、その程度はまだ不十分であり、in vivoにおいて遺伝子導入細胞の十分な生着を得るためには、ベクターの一層の弱毒化が必要であると考えられた。
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