妊娠中のサイトロメガロウイルス(CMV)の初感染または再活性化による胎内感染は児に重篤な後遺症を残すこともある。周産期、特に胎内感染のスクリーニングおよび早期診断、および治療は胎児・新生児の予後判定と長期的管理において重要である。我々は妊娠中の活動性CMV感染の診断への応用の目的でCMV感染における特異的T細胞の活性化を細胞内サイトカインの産生を指標にして検討した。またCMV胎内感染の成立に関してはウイルス遺伝子に関する研究からある特殊な遺伝子を有する株による初感染および再感染の重要性も指摘されていることから胎内感染を引き起こし、胎児および新生児に障害を残すCMV株のウイルス学的特性に関しても検討した。 CMVの胎内感染の早期診断および治療においては妊娠中の活動性CMV感染の評価が重要と考えられた。感染妊婦および胎内感染児の尿や子宮頚管スワブなどの臨床材料よりのPCRによるウイルスDNAの検出ならびに遺伝子型の解析も感染の早期スクリーニングおよび児の予後判定さらにはCMV株の特性の検討に応用が期待できた。またPCR法で臨床分離株よりCMV major immediate early (MIE)領域のDNAの増幅を行い、制限酵素Hae IIIおよびHinf Iを用いて切断点を比較した。同様にglycoprotein H (gH)ならびにgB領域DNAの増幅も行い、Rsa IおよびHinf Iを用いて切断点を比較を試みた。今後は臨床分離株のこれらの遺伝子領域の各制限酵素による切断パターンについての解析を行う予定である。また今回はCMV活動性感染の評価に応用する目的で感染妊婦および胎内感染児のCMV特異的CD4+およびCD8+ T細胞における細胞内サイトカインのinterferon(IFN)-γおよびtumor necrosis factor (TNF)-αのフローサイトメトリーによる検出を指標に特異的細胞性免疫能について検討した。
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