研究概要 |
ON-OFF機構を作製しSandhoff病マウス(SDマウス)にて病態生理、治療法を研究することを目的としたが、平成15及び16年度において度重なる動物センター内の感染事故により、マウスを事実上増やすことが出来ず、ON-OFF機の構築は完成出来なかった。一方、プラスミド遺伝子治療の中で、SDマウスの自己免疫現象を見出し、これがSDマウスの病態に非常に重要であることを以下のように検証した。 (1)SDマウスにおける免疫異常:SDマウスの血清には蓄積物であるGM2,GA2に対する自己抗体が存在し、週数が増加するにつれて抗体価が上昇。血清のIL4の上昇を認め、Th2優位であった。免疫担当臓器の異常(脾臓、胸腺の萎縮)も認めた。神経細胞ではIgGの蓄積が見られた。そこで我々はSDマウスでは蓄積物が酵素欠損の結果分解出来ないために自己の抗原となり自己抗体が出来、その結果、蓄積物が多量に見られる神経系へと自己抗体が沈着し、自己免疫反応が起き、神経症状に関与すると言う仮説を立てた。 (2)自己免疫の病態への関与の証明:以上の仮説を証明するために自己免疫に関与する遺伝子をノックアウトしたFcRγKOマウスと交配しダブルノックアウト(DKO)マウスを解析した。その結果、DKOマウスは神経症状が緩和され、神経病理所見も改善し、寿命も延長した。18週DKOマウスでのGM2,GA2蓄積量がSDマウスの末期(15週)より増加するものの、アポトーシスは優位に少なかった。また、マイクログリアを介した炎症反応、TNF-αの発現もDKOマウスでは優位に少なかった。更にヒトのSD患者の脳においても自己抗体が沈着していることを見いだし、ヒトでも同様の病態が関与していることが考えられた。 以上より単なる蓄積がライソゾーム病の本体ではなく、蓄積の結果の自己免疫現象が病態に関与することが示唆された。
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