研究概要 |
無脾症や左心低形成症候群などの重症チアノーゼ性先天性心疾患にみられる肺血流分布異常のメカニズムを明らかにするため、正常マウス胎仔肺の初期形態形成における毛細血管形成を共焦点レーザ走査顕微鏡(CLSM)を用いて3次元的に観察し、血管新生の主要因子であるVEGF,及びそのレセプターであるFlk-1の局在を免疫組織化学(IHC)及びin situ hybridization(ISH)法により検討した。【対象と方法】妊娠ICRマウス胎仔肺(E9.5-18.5)を摘出・固定後、血管内皮細胞をPECAM-1,F-actinをphalloidinにて2重染色し、CLSMを用い血管内皮細胞・肺上皮細胞・間葉細胞の3者の関係を損なわずにwhole-mountにて観察した。次にVEGF蛋白・90mRNA及びFlk-1の局在をIHC・ISH法にて観察した。【結果】E9.5に肺芽周囲の間葉内にPECAM-1陽性の血管内皮細胞が散在し、E10.5-E12.5には原始血管叢の形成が、E13.5-15.5には管状構造をなす肺上皮細胞の周囲に血管内皮細胞の網日様構造が観察された。E16.5-E17.5には組織化された毛細血管網が見られ、E18.5には肺胞毛細血管膜の完成が観察された。VEGF蛋白は肺上皮細胞を中心にその周囲の間葉細胞に局在が見られ、一方VEGF mRNAの発現は肺上皮細胞に認められた。Flk-1は上皮細胞の周囲の間葉細胞に局在が見られた。 以上の結果より、マウス胎仔肺初期形態形成においては肺上皮細胞からのparacrine形式のVEGFシグナルが、血管内皮細胞による毛細血管形成を促進すると考えられた。
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