研究概要 |
【背景】小児循環器領域における診断・治療法は飛躍的に発達したが、チアノーゼ性心疾患の中には肺血管の低形成により根治術後に肺循環が成立しない症例が存在する。これらの長期予後を改善させるため病態生理の理解に基づいた治療法の確立が望まれるが、正常及び病的肺血管の形成メカニズムは未だ十分に解明されていない。そこで我々は正常マウス胎仔肺の毛細血管形成をVEGF-VEGFR(胎仔期に血管新生を促進するFlk-1、抑制的に制御するFlt-1)シグナルに着目し分子細胞生物学的に検討した。【方法】1)妊娠マウス胎仔肺におけるVEGF, Flk-1,Flt-1の局在をレーザ走査顕微鏡にて観察し、血管内皮細胞のDNA合成能をBrdU取り込みにて検討した。2)胎仔肺器官培養系にてアンチセンスDNA及び特異抗体によりFlk-1,Flt-1の機能を阻害した。【結果】血管内皮細胞と肺上皮細胞との関係から肺血管形成過程は、4つのステージに分けられた(The 2003 Weinstein Cardiovascular Development Conference,第39回日本小児循環器学会総会・学術集会にて報告)。VEGFは各ステージを通じてび漫性に発現を認めたが、Flk-1,Flt-1発現動態は、血管内皮細胞のDNA合成能変化と相関した。Flk-1の機能阻害により血管網の分枝は阻害され、Flt-1の機能阻害により血管網分枝の過増殖を認めた。【結論】正常マウス胎仔肺の毛細血管形成には、VEGF-Flk-1,Flt-1両シグナルのバランスによる原始血管網形成から組織化された肺毛細血管への再構築が必須と考えられた。以上の成果についてThe American Society for Cell Biology,43rd Annual Meeting,第44回日本組織細胞化学会・第35回日本臨床電子顕微鏡学会合同学術集会にて報告した。
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