研究概要 |
Akt/PKBは心筋細胞における生存シグナル伝達の中心をなし、Aktを賦活化することにより心不全を予防できる可能性がある。Aktによる抗apoptosisの研究は主にmyristoylated Aktを用いて行われてきたが、m-Aktは生理的範囲を逸脱したkinase activityを示し心筋細胞を著しく肥大させてしまう。一方我々はAktの抗apoptosis作用の基質は主に核に存在する可能性を示した(Circ Res 2001)。そこでwild typeのAktに核移行シグナルをつけたDNA constructを作成し、adenovirusを用いてラット単離心筋細胞に遺伝子導入してその抗apoptosis効果を検討した。Apoptosisはstaurosporin、deoxyglucoseにより誘導した。Akt/nucは核に集積し、心筋細胞を有意に肥大させなかった。対象に比べて生理的範囲の上昇のリン酸化Akt(pAkt308,20+/-0.4(p<0.01);pAkt473,4.5+/-1.4(p<0.01))を示した。またin vitro kinase assayでも、対象に比べて2.2+/-0.18(p<0.01)倍のkinase activityを示した。Staurosporin、deoxyglucoseを用いたapoptosisも、各々対象と比べて78.0+/-17.5%と40.3+/-21.6%(p<0.01)、82.2+/-11.2%と46.8+/-16.6%(p<0.01)と有意に抑制した。Akt/nucは心筋細胞を肥大させることなく生理的範囲の活性を核において示し、apoptosisから保護した。Akt/nucはadenovirusを用いた遺伝子導入や細胞移植の手法を用いることにより、将来心不全の治療に応用できる可能性がある。
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