研究概要 |
1.新生児TSS様発疹症(NTED)の病態・全体像の解析 (1)NTEDの全体像の把握のため、2002年発症例について行った全国主要新生児施設に対するアンケート調査を解析した。その結果、NTED経験のある施設はほとんど横ばいだが、各施設あたりの症例数は減少傾向と考えられた。早産児に多い傾向は変わらず、これらを含めて、日本未熟児新生児学会で口演報告した。 (2)NTED重症例として、壊死性気管・気管支炎による死亡例、食道気管瘻による死亡例を日本産婦人科新生児血液学会で口演報告した。 (3)全国NTED患児から回収したMRSA68株の遺伝子多型解析を行い、クローン性を検討。結局66/68MRSA株が、単一クローン由来であることが確認され、J Clin Microbiolに論文報告した。 (4)Tours, FranceにおけるNTED症例を海外初例として、J Clin Microbiolに論文報告した。 (5)NTEDの最新知見を第9回世界周産期学会で講演した。また、日本小児科学会雑誌、Pediatircs InternationalにNTED総説を掲載した。 2.川崎病患児のT細胞の解析 (1)自治医大で川崎病と診断された2ヶ月齢から1歳11ヶ月齢までの児11例と他院で発症した乳児1例について、家族のinformed consentの上、急性期と回復期において、末梢血から単核球を分離し、CD4,8,TCR Vβ2,3,12,CD45RO発現をモノクローナル抗体で染色しFACSで検討した。NTEDのような著明なTCRVβ2陽性T細胞の増幅を認めた児はいなかった。しかし、2例において、むしろTCRVβ2陽性T細胞の減少を認め、その1例は抗体検査でTSST-1の関与が確認された。以上から、今回の検討では川崎病の主因として、TSST-1の関与はほとんどの例で証明できなかった。しかし、川崎病の一部にはTSST-1の関与が認められる場合があり、その場合TCRVβ2陽性T細胞はNTEDのようには増幅していないことが確認された。
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