E2A-HLFキメラ転写因子の標的遺伝子の同定とその機能

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14570769
• 研究機関: 獨協医科大学
• 研究代表者: 黒澤 秀光 獨協医科大学, 医学部, 助教授 (10205239)
• キーワード: E2A-HLF / ANNEXIN II / 転写調節因子 / 標的遺伝子

研究概要

17;19転座急性リンパ性白血病((17;19)白血病)は、E2A-HLFキメラ転写因子が発現を誘導している標的遺伝子により凝固線溶異常が生じているという仮説をもとに研究計画をたて、ANNEXIN IIを候補遺伝子として解析を実施した。ANNEXIN IIはプラスミノーゲンと組織プラスミノーゲンアクチベーターのレセプターで急性前骨髄性白血に合併する線溶異常症の原因であることが証明されている遺伝子である。前年度までにANNEXIN IIはE2A-HILFの標的遺伝子であること証明し、さらにANNEXIN IIはRasシグナル伝達経路を介して発現調節されていることを証明した。この結果をふまえて本年度は以下の実験を行い結果が得られている。1.ANNEXIN IIの細胞局在の検討ANNEXIN IIが凝固線溶に関与するためには細胞表面に発現していなければならない。細胞表面の発現量の検討を行った。ANNEXIN IIはカルシュウム依存性に細胞表に発現している。この特徴を利用して、カルシュウム非存在下で遊離した培養液中のANNEXIN IIをイムノブロット法で検索した。17;19白血病は他のリンパ性白血病に比べて細胞表面のANNEXIN IIの発現量は多かったが、17;19白血病すべての細胞株で確認されなかった。E2A-HLFキメラ転写因子の構造には2種類のタイプがあり、このタイプにより細胞表面の発現量が異なる可能性が示唆された。また、細胞株が樹立された症例の初発症状の検討からANNEXIN IIは17;19白血病のもう一つの特徴である高カルシュウム血症との関与が示唆された。2.ANNEXIN IIの機能解析 E2A-HLFキメラ転写因子の発現により高アポトーシス機能を有することは証明されている。標的遺伝子のANNEXIN IIがその機能があるか検索した。ANNEXIN IIを過剰発現するIL-3依存性マウスB細胞作成し、実験を行った。しかし、ANNEXIN IIにはE2A-HLF過剰発現したときに得られたようなIL-3機能を代償する抗アポトーシス機能は有していなかった。3.抗アポトーシス機能を有する候補遺伝子のクローニング PCRを用いてクローニングを行ったが、標的遺伝子であるかどうかは今後検討していきたい。

研究成果

• [文献書誌] Matsunaga T, Inaba T, A.T.Look, Kurosawa H: "Regulation of annexin II by cytokine-Initiated signaling Pathways and E2A-HLF oncoprotein."Blood. 103・8(発表予定). (2004)
• [文献書誌] Furukawa T, Azakami S, Kurosawa H et al.: "Cystic partially differentiated nephroblastoma, embryonal rhabdomyosarcoma, and multiple congenital anomalies associated with variegated mosaic aneuploidy and premature centromere division."J Pediatr Hematol Oncol. 25・11. 896-899 (2003)
• [文献書誌] Matsunaga T, Kurosawa H et al.: "Recurrent erythroblastopenia associated with varizellazoster virus infection in an infant."Pediatrics International. 45. 355-358 (2003)
• [文献書誌] 中川栄二, 黒澤秀光他: "Dyke-Davidoff-Masson症候群の2例"小児科. 44. 2151-2154 (2003)
• [文献書誌] 松永貴之, 黒澤秀光他: "ムンプスウイルスの不顕性感染が認められた急性肝炎の重症型の1例"日本小児科学会誌. 107. 1645-1649 (2003)
• [文献書誌] 杉田憲一, 黒澤秀光他: "治療終了後に精神症状を認めた小児がん症例"日本小児血液学会会誌. 17. 123-127 (2003)