先天性ステロイド抵抗性ネフローゼ(SRN)における蛋白尿の発症機序を解明することを目的とした。 1)SRNにおいて同定されているミスセンス変異(N末端側2種類、C末端側3種類)のポドシンコンストラクトを作製し、HEK-293細胞に遺伝子導入した後、細胞内局在を光顕および電顕レベルで観察した。 C末端側3種類の変異は全て本来の細胞膜局在を失い、各々小胞体、ライソゾーム、アグレソームとして観察された。一方、N末端側変異の局在と正常との差はみられたかったが、その細胞膜局在の強度は減少したいた。 2)上記の変異ポドシンをネフリン発現細胞に共発現させ、両分子の蛋白相互作用がネフリンの細胞内輸送系に影響を与える可能性について検討した。 C末端側3種類の変異ポドシンは、本来の細胞膜局在を示すネフリンの輸送系を阻害し、各々の細胞内局在部位に野生型ネフリンを停滞させた。これは、免疫沈降法により、変異ポドシンの野生型ネフリンに対する強い蛋白結合能に由来することが判明した。 以上のことから、SRNにおける大量の尿蛋白の出現は、特にC末端側の変異では、スリット膜構築蛋白であるネフリンの細胞内輸送が阻害されるために生ずることが強く示唆された。
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