研究課題/領域番号 |
14570775
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
服部 元史 東京女子医科大学, 医学部, 助教授 (50192274)
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研究分担者 |
秋岡 祐子 東京女子医科大学, 医学部, 助手 (90212422)
土谷 健 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (00246472)
伊藤 克己 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (90056771)
近本 裕子 東京女子医科大学, 医学部, 助手 (80307529)
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キーワード | 原発性FSGS / 液性因子 / ポドサイト / 蛋白尿 / cDNAアレイ |
研究概要 |
原発性巣状系球体硬化症(focal segmental glomerulosclerosis : FSGS)の蛋白尿発症機序は不明である。しかし、一部の患者では血漿中に糸球体濾過障壁の蛋白透過性を亢進させる何らかの液性因子(蛋白尿惹起液性因子:CFs)が存在する可能性が示されている。一方、蛋白尿発症におけるポドサイトの重要性と濾過障壁の分子レベルでの理解が進んでおり、CFsによる直接的なポドサイト障害が原発性FSGSにおける蛋白尿発症機序のkey-stepである可能性が想定される。そこで今回、原発性FSGS患者血漿特異的に発現が変化するポドサイト関連分子群の同定を目的として、原発性FSGS患者血漿とマウス培養ポドサイト細胞(MPC)とのdirect-interactionについて、cDNAアレイシステムを用いてスクリーニングし、得られた結果の部については定量的PCR法にて確認した。 MPCは温度感受性変異株SV40由来のlarge T-antigenを導入したトランスジェニックマウスから樹立された細胞株で、発ガン遺伝子の許容温度である33℃で培養している間は増殖するが、非許容温度370Cでは細胞は増殖を止め、微小管依存性の突起形成を認めるようになる(分化する)。cDNAアレイシステムは、Clontech社製のAtlas mouse 1.2 array(検討遺伝子数は1176個)を使用した。なお、腎移植後再発した原発性FSGS患者血漿特異的に発現変化する遺伝子群を同定する目的で、コントロールとして、腎移植後再発しなかった原発性FSGS患者血漿、微小変化型ネフローゼ症候群(MCNS)患者血漿、ネフローゼ状態にある紫斑病性腎炎(HSPN)患者血漿、健常人血漿(FFP)、さらに細胞毒性のコントロールとしてピューロマイシン・アミノヌクレオシドの影響についても検討した。 各種血漿添加前後の遺伝子発現プロファイルの差をAtlas lmage Softwareを用いて解析し、さらに定量的PCR法にて確認したところ、腎移植後再発を認めた原発性FSGS患者血漿特異的にinlegrin-linked-kinase(ILK)mRNA発現の亢進を認めた。ILK蛋白発現やILK活性については検討中であるが、腎移植後FSGS再発患者血漿中には、ポドサイトの糸球体基底膜への接着に影響を及ぼす因子が含まれ、その機序にILKが関与している可能性が示唆された。今後、原発性FSGS患者血漿特異的に発現が変化するポドサイト関連分子群をマーカーとしたbio-assayシステムが確立されれば、CFsの分離・同定に向けて有力なツールになるものと期待される。
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