研究概要 |
筋緊張性ジストロフィー症の責任遺伝子であるDMPK(myotonic dystrophy protein kinase)はprotein kinaseのdomainをもち、その対象となる基質のひとつとして、myosin phosphatase large subunit(MYPT1)がある。MYPT1は、細胞骨格にかかわるmyosinの脱燐酸化に関与して細胞の移動等に関係している。筋緊張性ジストロフィーは、様々な全身性症状を呈する疾患であるが、細胞を使用した実験系では、より長いCTG repeat expansionをともなうcell lineがより早く細胞死にむかうなどcell cycleの異常も関与している可能性がある。臨床的裏付けとしては、糖尿病の合併、性腺機能低下、若禿、心伝導路障害、白内障など加齢と関係する臨床症状を呈する。異常の知見より、筋緊張性ジストロフィー症の責任遺伝子であるDMPKはそのCTG repeatの延長により、loss of functionの状態になり、相互作用を有する蛋白(MYPT1、その他、細胞周期に関与するcycline dependent kinase等の蛋白)の機能にも影響を及ぼしている可能性を我々は推測している。本研究期間中にDMPK蛋白に結合するubiquilin-1という新たな蛋白をyeast two-hybrid法にて見いだした。この蛋白が、1)DMPKの燐酸化を促進すること、2)DMPK蛋白の半減期を延長させること、3)細胞内で共存し、ubiquilin-1蛋白がDMPK蛋白の局在化に関与している可能性を発見した。このubiquilin-1自身は、そのdomain相同性のサーチから、DSK-2,hPLIC-1,XDRP1などの細胞周期の制御に深く関わっている蛋白と高い相同性をもつ事が判明し、細胞周期制御に関わっている事が示唆された。次にubiquilin-1をbait proteinとしてさらにbrain cDNA libraryをスクリーニングおこなった。しかし、非特異的蛋白との結合が多く、あらたなbinding proteinを確認する事はできなかった。protein protein interaction assayでは、十分なスクリーニングをおこなったにも関わらず細胞周期に関わる蛋白複合体の同定をつきとめることはできなかった。Ubiquilin-1はその相同性から蛋白の周期、シャペロン作用と密接に関わっている事が推測される。したがって、DM患者由来のlymphoblast cell lineをCTG repeat instabilityのmodelとして用いて、各々異なるrepeat数の細胞株にubiquilin-1をトランスフェクションして、細胞周期に関わるp21、cycline dependant kinase, Erk1などの蛋白の発現をwestern blot等で確認を行っていく必要がある。
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