血中アディポネクチン(adp)値は肥満児では非肥満児より有意に低値で、治療で肥満度が改善した例では上昇を認めた。血中adp値は内臓脂肪面積や腹囲と負相関した。AdpとTNF-αと相互に拮抗的に阻害し合うことが明らかにされている。3T3-L1脂肪細胞(白色脂肪細胞)においては、誘導型NO合成酵素(iNOS)の誘導にLPS(L)、TNF-α(T)、IFN-γ(I)の3者が必要であったが、培養褐色脂肪細胞では、LとTの2者でiNOSが誘導された。cAMPアナログとforskolinは、3T3-L1脂肪細胞ではL、T、Iの3者によるiNOSの発現を減弱させ、褐色脂肪細胞では、LとTによるiNOSの発現を高めた。iNOS発現変動は転写因子NF-κBの活性化変動と一致した。酸化的変性を受けたlow-density lipoprotein(LDL)は直接動脈硬化を引き起こす。酸化LDLは酸化ストレスの良い指標となるが、小児では成績が未だ報告されていなかった。肥満児の酸化LDLは非肥満児より有意に高値であり、腹囲、腹囲臀囲比、内臓脂肪面積、肝機能、尿酸、トリグリセリド、LDL-コレステロール、アポB、アポB/アポA1などと良好な正相関を示すため、metabolic syndromeとの関連性が示唆された。3T3-L1脂肪細胞で、TNF-αは濃度依存的にNF-κBを活性化し、N-acetyl cysteineはTNF-αによるNF-κB活性化を抑制した。3T3-L1脂肪細胞では抗酸化酵素であるカタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ、スーパーオキシドジスムターゼが細胞の分化段階にしたがって蛋白量および酵素活性が高まった。分化に伴って代謝が活性化するため、酸化ストレスも高まるが、これに対応した発達と考えられた。TNF-α投与により抗酸化酵素活性は低下し、脂肪組織中の酸化ストレスが高まる可能性が示唆された。インスリン抵抗性、酸化ストレス、動脈硬化促進などにはTNF-αが中心的な役割を演じている。
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