ラフォーラ病は、刺激誘起性ミオクローヌス、間代硬直発作などを特徴とし、運動失調、精神機能の退行を伴う進行性で重篤なてんかんであり、10歳から18歳で発症し多くの患者は発症後10年以内に死亡する。ポリグルコサンを主体とするラフォーラ小体と呼ばれる凝集体が、脳、肝臓、皮膚など広い組織で認められる。今のところ有効な治療法は無い。原因遺伝子としてEPM2Aが報告されており、以前我々はEPM2Aがデュアルフォスファターゼであるラフォーリンをコードすることを明らかにしている。 本課題において我々はフォスファターゼ領域をコードするエクソンをターゲットとしたノックアウトマウスの作成に成功し、このマウスが、1.生後2ヶ月で広い範囲の神経組織において細胞変性を示すがラフォーラ小体の形成はこの時点ではさほど認められないことこと、2.4-12ヶ月でラフォーラ小体の蓄積が顕著に認められるようになること、3.ラフォーラ小体がユビキチンおよび、AGEP陽性であること、4.変性した細胞はアポトーシスの特徴(DNAフラグメンテーション、TUNEL陽性)を示さないこと5.9ヶ月頃より、ミオクローヌス発作とそれに伴う脳波異常を示すようになること、等を明らかにし、報告した。これらの知見は、発症メカニズムの解明に大きく役立つものである。又、我々はイーストツーハイブリッド法・substrate trap法を用いてラフォーリンに結合する蛋白・基質の候補を複数同定し、現在、その確認と結合の機能的意味を探っており、immunoliposome法を用いた遺伝子治療についても検討を重ねている。
|