ラフォーラ病は、全身性痙攣を初発症状として6歳から18歳で発症し、刺激誘起性ミオクローヌス、欠神発作、大発作、痴呆、小脳失調症などの症状を特徴とするてんかんで、神経細胞内や心筋、肝細胞、皮膚の汗腺上皮細胞、骨格筋に検出されるポリグルコサンを主体とするラフォーラ小体が本疾患の特異的所見として知られる。症状は進行性であり、発症後10年以内に死亡する。今のところ有効な治療法は無い。脳、心臓、肝臓、骨格筋、腎臓など広い範囲の組織に発現が認められる遺伝子EPM2Aにミスセンス変異、ナンセンス変異、フレームシフト、欠失変異など複数の疾患変異が報告され、EPM2Aがコードする蛋白はラフォーリンと名付けられている。我々は以前、ラフォーリン蛋白がdual-specificity phosphatase活性を持つこと、細胞内でポリリボゾーム画分に存在すること、疾患変異を有する蛋白が異常な胞状構造を形成しそこに蓄積することなどを明らかにしている。 本課題において我々は、EPM2Aのalternativeスプライシングがラフォーリンの細胞内局在を左右すること、ラフォーラ病患者が早期発症痴呆を伴う型と伴わない型に分けられ、さらにEPM2A遺伝子エキソン1の変異と早期発症痴呆併発型とが関連すること、ラフォーリンがNifU-likeドメインを有するHIRIP5蛋白と結合することなどを明らかにし、論文として報告した。また、我々はEPM2Aノックアウトマウスを作成し、このマウスがラフォーラ病患者と同様に、神経細胞変性、脳波異常に加え、ラフォーラ小体を蓄積することを見いだし報告した。これらの知見は、ラフォーラ病発症メカニズムの理解、治療法の開発に大きく役立つものである。
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