本年度は進行性ミオクローヌスてんかん(PME)の病態を明らかにしPMEの治療法開発に貢献するため、PMEの既往を有する小児期発症の遺伝性歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)例ならびにPME既往を有さない成人発症DRPLA例において、剖検組織を用いた後方視的な検討を行った。脳幹部連続切片の通常染色標本とモノアミン系神紹云達物質(Tyrosine Hydroxylase、Tryptophan Hydroxylase)、神経ペプチド(Substance P、Methionine-Enkephalin)、カルシウム結合蛋白(Calbindin D28K、Parvalbumin)、に対する免疫組織化学染色による解析では、脳幹被蓋の容量は減少していたにもかかわらず機能マーカーの表出は保たれPMEを呈した症例に特有な異常所見を見出せなかった。一方、同一剖検例の大脳辺縁系での免疫組織化学的解析においては、カルシウム結合蛋白に対する免疫染色ではGABA作動性の抑制性介在神経細胞の減少がPMEを呈した症例優位に認められた。また、興奮性アミノ酸毒性制御に関係するグルタミン酸トランスポーターの表出はPMEを呈した例で軽度の低下を認めたのみであった。脳幹部での解析においてPME特異的な異常を認めなかったことと合わせ、DRPLAのPME発症に大脳辺縁系でのGABA作動性の抑制性神経系の機能異常が関与する可能性が考えられた。これらの成果の一部を2002年9月軽井沢で開かれた第4回アジア太平洋てんかん学会議で発表した。また関連した研究課題を同月北京で開かれた第9回国際小児神経学会で発表した。
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