研究課題
進行性ミオクローヌスてんかん(PME)の治療法開発に貢献するため、PMEの病因として本邦での発生頻度が高い遺伝性歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)に関して、剖検脳組織を用いた後方視的な検討を本研究において進めてきた。昨年度、脳幹部での解析ではPME特異的な異常を認めず、一方、大脳辺縁系での解析ではGABA作動性の抑制性神経系の異常が認められることを報告した。本年度はGABS作動性の抑制性神経系の機能異常が、大脳辺縁系以外の大脳皮賃でも認められるかどうか検討を行った。対象はDRPLA剖検例14例と年齢相当正常対照10例で、DRPLA例はPMEの既往を有する若年型7例・早期成人型2例、PME既往を有さない後期成人型5例。前頭葉、頭頂葉の連続切片でGABA作動性の抑制性神経系の指標であるカルシウム結合蛋白と興奮性アミノ酸毒性を制御するグルタミン酸トランスポーターに対する免疫組織化学染色を施行し、陽性構造を評価した。カルシウム結合蛋白に対する免疫染色では、Calbindin-D28K優位にGABS作動性の抑制性介在神経細胞が高度に減少し、Parvalbumin陽性細胞にも中等度の減少がみられたが、Calretinin陽性細胞は比較的保たれていた。これらの変化はPME既往のある症例に優位にみられたが、両者の差は有意ではなかった。一方、グルタミン酸トランスポーターに関しては、極少数例がグリア細胞系トランスポーターの表出低下や神経細胞系トランスポーターの表出増強を示したが、比較的保たれていた。これらの結果は昨年度明らかにした大脳辺縁系での解析結果と共通しており、DRPLAでのPME発症に、GABA作動性の抑制性神経系の機能異常が関与していることが強く示唆された。なお、これらの成果の一部を2003年10月仙台市で開かれた第37回日本てんかん学会で発表した。
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