平成14・15年度は、進行性ミオクローヌスてんかん(PME)の病因として本邦での発生頻度が高い遺伝性歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)剖検脳での病理学的検討を行い、PMEの既往を有する小児期症のDRPLA例ならびにPME既往を有さない成人発症DRPLA例において、剖検組織を用いた後方視的な解析を行った。脳幹部では神経伝達物質、神経ペプチド、カルシウム結合蛋白にPME特有な異常所見を認めないのに対して、大脳辺縁系を含む大脳皮質ではGABA作動性の抑制性神経細胞の指標であるカルシウム結合蛋白の表出障害がPME既往症例優位にみられ、一方、興奮性アミノ酸毒性制御に関係するグルタミン酸トランスポーターの表出はPMEを呈した例でも軽度の低下にとどまることを明らかにした。平成15・16年度は、DRPLAに次いで発生頻度の高いPMEの原因疾患であるラフォラ病と神経性セロイド・リポフスチノーシス(NCL)に関して、剖検脳での免疫組織化学的解析に加えて、共同研究を行っている都立府中療育センタ-に入所している患者さんから同意の下、提供された生体資料での酵素標識免疫吸着測定法(ELISA)による予備的検討を行った。ラフォラ病の神経変性においては、アポトーシスによる神経細胞死は明らかではなかったが、グルタミン酸トランスポーターの表出の選択的障害がみられ、興奮性アミノ酸毒性の関与が示唆された。また、剖検脳での免疫組織化学的検討と尿を用いたELISA解析によりDNAの酸化的障害の関与が確認された。一方、NCLでは、罹病期間の長さに比例してGABA作動性の抑制性経細胞の減少がみられけいれんの重症度と関係する可能性が示唆された。一方、グルタミン酸トランスポーターの表出低下はカルシウム結合蛋白の障害より軽度であり、興奮性アミノ酸毒性に比べGABA系神経の障害がより高度であると推定された。
|