研究概要 |
表皮角化細胞が分化の過程で発現する各種蛋白の相互作用を解析し、本年度は以下の実績を得た。 1)乾癬をはじめとする異常角化過程で発現する蛋白であるelafinの細胞内局在を、角質細胞の辺縁帯前駆体蛋白であるinvolucrinの局在の変化とともに径時的に検討した(J Inv Dermatol 2002)。その結果、乾癬表皮ではelafin分子はinvolucrin分子の辺縁帯への架橋以前は細胞質内の分泌顆粒内に蓄えられ、暫時分泌されるが、involucrinの架橋開始とともに、細胞内の顆粒の分解、細胞内への拡散、辺縁帯への架橋がおこるおとがわかった。すなわち、異常角化状態では分泌蛋白が細胞内で辺縁帯前駆体蛋白としても利用されることが明らかになった。 2)Loricrin分子は正常角化では辺縁帯の成分として働くが、loricrin遺伝子に特異な変異による読み枠のずれがおきると核内移行シグナルを獲得し、野生型loricrinやinvolucrinなど他の前駆体蛋白とは架橋せず、核内、とくに核小体に局在し、角化細胞の分化を阻害することを明らかにした(J Dermatol Science 2003)。 3)Keratin 1(K1)およびK10は表皮角化細胞の分化型ケラチンであるが、従来からこれらの遺伝子の異常としてしられていた角化異常症である水庖型先天性魚鱗癬様紅皮症に加え、豪猪皮状魚鱗癬の1型であるCurth-Macklin型lchthyosis HystrixにおいてはK1のテイルドメインに変異があることによって細胞骨格の異常がおきることが病因であることをつきとめた(Histology Histopathology,2002)。さらに、K1テイルドメインの異常をもつ蛋白が細胞内で部位、分化特異的に発現していること、他の研究者が示唆しているようなデスモゾームの異常をまねいているのではないことを明らかにした(J Inv Dermatol 2003)。
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