研究概要 |
1.表皮のセリンプロテアーゼインヒビターであるLEKTIが層板顆粒によって運搬、分泌されることを明らかにした(J Invest Dermatol,124:360,2005)。その際、LEKTIの基質であるカリクレインはLEKTIよりも産生と輸送、分泌が遅れてなされており、カリクレインによるデスモゾームの分解が角層下部では始まらないように調整する機構として働いていると考えられた。また、LEKTIの欠損による遺伝性疾患であるNetherton症候群ではデスモゾームの異常解離がおきていることも明らかにした。 2.Netherton症候群のモデル動物としてLEKTIノックアウトマウスを作成し、ここでもデスモゾームの異常な解離がおきており、これはデスモゾーム構成要素であるデスモグレイン1の分解亢進によるものであることを明らかにした(Nature Genetics 37:56,2005)。 3.重篤な神経症状、魚鱗癬と掌蹠角化症が認められる、北イスラエルの1家系が、細胞内輸送小胞の癒合に関与するSNARE蛋白のひとつ、SNAP29の遺伝子変異による新規の劣性遺伝性疾患であることを発見した(Am J Hum Genet 77:242,2005)。この疾患をCEDNIK症候群(CErebral Dysgenesis, Neuropathy, Ichthyosis, Keratoderma)と命名した。患者皮膚の表皮有棘層、顆粒層では細胞質内に正常な層板顆粒の他に、多数の小胞が観察された。これらの小胞は著明に肥厚した角層の下層の細胞質内にも認められた。層板顆粒分子であるGlucosylceramide, KLK5およびKLK7が角層内の異常小胞にみとめられたことから、本症では同顆粒の輸送がそこなわれていることがわかった。以上の結果から、SNARE蛋白が表皮層板顆粒分子の輸送に重要な働きをしていることがはじめて示された。
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