研究概要 |
角層における脱イミノ化をつかさどる酵素、ペプチジルアルギニンデイミナーゼ(PAD)ファミリーに属する分子、PAD1,2,3の発現と基質特異性を調べた(Cell Mol Life Sci 2005)。その結果、それぞれフィラグリンを異なる効率で脱イミノ化することが分かった。また、PAD1とPAD3は角層下層でフィラグリンと共存することがわかった。PAD1は角層上層でも発現しており、K1の脱イミノ化に関与していると考えられた。 表皮のセリンプロテアーゼインヒビターであるLEKTIが層板顆粒によって運搬、分泌されることを明らかにした(J Invest Dermatol 2005)。その際、LEKTIの基質であるカリクレインはLEKTIよりも産生と輸送、分泌が遅れてなされており、カリクレインによるデスモゾームの分解が角層下部では始まらないように調整する機構として働いていると考えられた。また、LEKTIの欠損による遺伝性疾患であるNetherton症候群ではデスモゾームの異常解離がおきていることも明らかにした。 Netherton症候群のモデル動物としてLEKTIノックアウトマウスを作成し、ここでもデスモゾームの異常な解離がおきており、これはデスモゾーム構成要素であるデスモグレイン1の分解亢進によるものであることを明らかにした(Nature Genetics 2005)。 重篤な神経症状、魚鱗癬と掌蹠角化症が認められる家系が、細胞内輸送小胞の癒合に関与するSNARE蛋白のひとつ、SNAP29の遺伝子変異による新規の劣性遺伝性疾患であることを発見した(Am J Hum Genet 2005)。この疾患をCEDNIK症候群(CErebral Dysgenesis, Neuropathy, Ichthyosis, Keratoderma)と命名した。本症では層板顆粒の輸送がそこなわれていることがわかった。以上の結果から、SNARE蛋白が表皮層板顆粒分子の輸送に重要な働きをしていることがはじめて示された。 新規の層板顆粒分子としてさらに2つのメンバーを発見した。すなわちA2ML(alpha-2 macroglobulin-like)と、Dermokinである(J Biol Chem,2006,J Invest Dermatol 2006)。
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