研究概要 |
我々は、以前、表皮真皮基底膜に存在するラミニン-5 α3鎖C末のLG4ドメインに、シンデカン受容体を介し、細胞接着活性を有する12アミノ酸シーケンスを見いだした。その後、この部位が、PC-12細胞の神経細胞突起伸長を誘導することも見いだした。さらに、ラミニンα4鎖の前述シーケンスに相当する部位においても、シンデカン受容体の結合も証明した。このように、ラミニンには、細胞接着活性が知られているが、その受容体として、インテグリンのみならず、シンデカンの関与を明確に示した世界初の発見と言えよう。α3鎖由来の活性合成ペプチド(A3G756)を用いて、細胞遊走に関していると考えられるマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)-1,-9の発現を解析した。正常表皮細胞において、A3G756は、ヘパリン依存性にIL-1βを発現させ、そのautocrine loopを介してMMP-1,MMP-9の発現増加を起こすことを証明した。このシグナル伝達には、MAPKのp38とErkの活性化が必須であることを、特異的阻害剤である、SB202190,PD98059を用い、RT-PCR, western blottingにより証明した。表皮細胞が創傷の場で産生するラミニンα3鎖は、C末のLG4ドメイン-シンデカン結合を介し、IL-1β,MAPK経由でMMP-1,-9の発現を誘導し、細胞遊走、創傷治癒に関係している可能性を示した。
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