研究概要 |
エンドセリン(ET)は、血管内皮由来の強力な血管収縮性ペプチドとして単離、同定された。3種類のアイソフォーム(ET-1、ET-2、ET-3)を有するETは、血管内皮以外の多くの組織からも産生され、ETA、ETBの両受容体を介して多彩な生理作用を有する。例えば、ET-1は線維芽細胞に対するコラーゲン産生促進作用を有し、線維化や強皮症への関与が示唆されている。また、好中球の遊走を促進することから、炎症反応への関与も示唆されている。同様に、皮膚マスト細胞もアレルギー反応のみならず線維化や強皮症への関与が報告されているが、両者の連関についての詳細は不明である。 そこで我々は、マウス胎児皮膚由来培養マスト細胞(FSMC)に対するET-1の影響について検討した。はじめにRT-PCR及び免疫染色により、FSMCがETA及びETBを恒常的に発現していることを確認した。ET-1は単独でFSMCの脱顆粒を濃度依存的に誘導した(10^<-6>-10^<-8>M)。ETA選択的遮断薬(BQ-123)はこの反応を完全に抑制した。また、IgE抗体での前処理はET-1による脱顆粒を増強した。興味深いことに、低濃度(10^<-9>-10^<-10>M)のET-1前処理は、抗原を用いた高親和性IgE受容体(FcεRI)の架橋により誘導されるFSMCの脱顆粒を抑制した。さらに、ET-1はFSMCからの種々のサイトカイン(TNFα,IL-6,VEGF,TGF-β1)産生も誘導した。一方、我々はFSMCがToll-like receptor (TLR) 3及びTLR9を発現することを既に報告しているが、FSMCはこれらに対応するリガンドであるpoly(I:C)及びCpG DNAの刺激によりET-1を産生した。 このように、ET-1は皮膚マスト細胞に対して多彩な作用を有し、皮膚の恒常性維持に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。
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