研究概要 |
発癌にはイニシエーションとプロモーションのステップを必要とするが、皮膚癌の予防には、可逆的な変化であるプロモーションを制御することが重要であり、またより実効的な手段と考えられる。本研究の目的は、紫外線発癌のプロモーターとして作用する分子を同定し、その制御を通じて紫外線発癌の抑制を試み、臨床応用を目指すことにあった。 1)紫外線皮膚発癌に紫外線によって発現が誘導されるシクロオキシゲナーゼ2(Cox-2)がプロモーターとしての役割を果たしていることが示唆されてきた。その誘導メカニズムにつき培養表皮細胞株HaCaT細胞を用いて検討した。中波庁紫外線(UVB)によるCox-2の誘導は活性酸素を抑制するN-acetylcysteineにより部分的に抑制され、UVBにより生成する活性酸素の関与が示された。EGF受容体の抑制剤や中和抗体によりCox-2誘導は阻害された。EGF受容体のリガンドの一つであるTGF-αの中和抗体はこの誘導を阻害せず、UVBがEGF受容体を直接的に活性化しCox-2を誘導する可能性が示された。細胞を4℃においてUVBを照射してもCox-2の発現が生じたことより受容体のクラスタリングではなく、別の機序によりEGF受容体が活性化されたと考えた。さらにPI-3キーゼ、ERK, p38MAPキナーゼもこのシグナル伝達に関与することが示された。 2)酸化ジアシルグリセロールが腫瘍プロモーターとして作用する可能性を考え、SENCARマウスを用い、DMBAでイニシエートした後に酸化ジアシルグリセロールを繰り返し塗布したが、TPAをプロモーターとして使用した場合と異なり、腫瘍形成はみられなかった。
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