グルココルチコイド受容体(GR)にはGRαとGRβの2種類があるがGRβはリガンド結合能を欠き転写活性化能を示さないことが知られている。また、GRβの発現の亢進が喘息や潰瘍性大腸炎のうちステロイド剤による治療抵抗例の末梢血リンパ球で認められることよりGRβの発現がグルココルチコイド抵抗性の一因とも考えられている。皮膚疾患におけるGRの発現は充分検討されていないためステロイド薬が治療の主体である天疱瘡・類天疱瘡を主とする自己免疫性水疱症におけるGRの発現を検討する計画をたてた。まず、健常人ボランティアおよび水疱症患者の末梢血からtotal RNAを抽出し半定量的RT-PCRを行った結果、(1)健常人末梢血中のGRαおよびGRβmRNAの発現量は従来の報告と一致しGRαに比してGRβの発現量が圧倒的に少ないこと、(2)天疱瘡患者・類天疱瘡患者の末梢血のGRα、βmRNAの発現も同様の結果であること、を確認した。次に、末梢血GRα、βmRNAの発現をより定量的に解析するためターゲット特異的なTaqManプローブおよびプライマーを用いreal-time PCR法を施行した。また、末梢血のみならず培養ケラチノサイトからtotal RNAを抽出しGRα、βmRNAの定量的測定を試みた。しかしながら、GRα、βmRNAの特異的な増幅反応が認められず、プライマーの設計を変え、さらに検討した。その結果、GRαについては定量的な測定が可能であることがわかったがGRβについては定量的測定が困難でありさらにプライマー・プローブの設計を検討する必要があると考えた。研究期間中にステロイド抵抗性を示す難治性自己免疫性水疱症患者が集まらなかったこともあり今回の研究で自己免疫性水疱症におけるグルココルチコイド受容体の発現とステロイド抵抗性との関連を明らかにすることはできなかった。
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