目的と方法:Klotho早老マウスはklotho遺伝子変異によりヒトの皮膚老化に類似した早老症状をきたす。本年度はKlothoマウスの皮膚の遺伝子発現解析を5週齢に加え8週齢のマウスでも行った。klothoマウスの内分泌異常の一つにビタミンD3の過剰状態があり、様々な臓器の早老変化との関連も示唆されている。昨年度の本研究のマイクロアレイ解析ではビタミンD3による皮膚の遺伝子発現変化が確認できた。Klothoマウスの皮膚老化でみられる真皮コラーゲン線維の減少はビタミンD3が真皮線維芽細胞の細胞増殖シグナル等へ及ぼす影響も機序のひとつと考えられる。今回は線維芽細胞の老化に伴う増殖停止にかかわるとされ、ビタミンD3によっても抑制されるPI3K/AKT/cEBPのリン酸化カスケードからIL-1発現制御につながるシグナリングの活性も調べた。 結果:これまでの報告でklothoマウスではストレス因子であるROSの増加が脳の神経細胞などで見られるため、ストレス応答機構の異常があると考えられてきたが、今回、ROSストレスに対する応答では本来低下すべき転写因子NF-1を介したシグナリングが活性化している遺伝子発現パターンが得られた。昨年度に見出されたPOUファミリー遺伝子の発現低下などを含めて、NF-1の関与したシグナル伝達異常による老化促進が推察された。また、培養線維芽細胞におけるビタミンD3によるPI3K/AKT/cEBP系のシグナル活性抑制とIL-1の遺伝子発現低下が確認されたが、klothoマウス皮膚ではIL-1βの発現が低下している所見も見られたことより、ビタミンD3過剰による線維芽細胞増殖の緩徐な抑制による皮膚の老化の可能性も示唆された。
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