研究概要 |
われわれはこれまで、サイトメガロウイルス初期プロモーターによってp53ファミリーを高発現する組み換えアデノウイルスAd-p53,Ad-p51A, Ad-p51B, Ad-p73α,Ad-p73βを作製し、各種癌細胞に対する細胞周期停止、アポトーシス誘導の有無と程度、および分子機構の研究を行なってきた。とくに、基盤研究C(2)「チロシナーゼ遺伝子の上流領域を組み込んだアデノウイルスベクターの開発」(平成11、12年度)よって、p53ファミリーのなかでは、p51Aにメラノーマ細胞に最も強いアポトーシス誘導活性が存在することを見い出した(Yamashita et al.,J Invest Dermatol 117:914-919,2001)。以上の研究成果をもとに、本研究では、明確なアポトーシスを示すSK-mel-118細胞とp51Aの系にしぼって、p51Aシグナルの下流遺伝子をクローニングすることを試みた。β-galactosidase(コントロール)およびp51Aをそれぞれ高発現するアデノウイルスをSK-mel-118細胞に感染させRNAを抽出し、デイファレンシャルディスプレイ(DD)-PCR法とマイクロアレイ解析を行ない、p51によって転写誘導される細胞遺伝子を複数種、同定した。DD-PCRによって、ケラチノサイトの分化に関係する遺伝子を、また、マイクロアレイにより、メラノサイト増殖因子受容体をコードする遺伝子を同定した。現在、これらの遺伝子が、p51Aの発現によって、実際にケラチノサイトとメラノサイトで誘導されるかどうかを検討中である。
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