UVA1療法は、浸潤するT細胞にアポトーシスを誘導しアトピー性皮膚炎や皮膚T細胞リンパ腫に有効な治療法である。臨床的な事実から、悪性T細胞は健常T細胞よりもUVA1照射に対して感受性が高いと考えた。UVB照射では悪性T細胞と健常CD4陽性細胞にアポトーシス誘導されやすさに差はなかったが、UVA1照射では感受性の違いが照射4時間後と24時間後において認められ、悪性T細胞においてUVA1によるアポトーシスが誘導されやすいことが明らかとなった。また一重項酸素発生系であるNDPO_2を添加し、24時間後にアポトーシスをみたところ、悪性T細胞株でアポトーシスが誘導されやすかった。Fas抗原発現の多いJurkat(wild)とFas抗体抵抗性Jurkat(C5)、Fas Ligandトランスフェクタント抵抗性Jurkat(R1)に対してUVA1を照射したところFasの発現量の多いほどアポトーシスが誘導されやすいことが明らかとなった。以上よりUVA1照射によって誘導されるT細胞アポトーシスは、一重項酸素の産生を介して、そのシグナルがFas-Fas Ligand機構へ伝達され、同一の細胞ではFas抗原の発現が多いほどUVA1照射によってアポトーシスが誘導されやすいことが示唆された。Fas-Fas Ligandの経路を介するアポトーシスの過程ではカスパーゼ群が活性化されるので、カスパーゼの関与を追求した。健常CD4陽性T細胞に比べて、悪性T細胞株の方がカスパーゼ3の発現量が明らかに高く、カスパーゼのインヒビターであるZ-VADfmkを加えUVA1照射を行ったところ、24時間後にアポトーシスが抑制された。Fas発現のほとんどないJurkat(R1)においてインターフェロンγを添加し、UVA1を照射したところ、アポトーシス誘導を増加させた。インターフェロンγ添加後、Z-VADfmkを加えてUVA1を照射すると、Z-VADfmkを加えないものに比べてUVA1に対する感受性が低くなった。以上より、UVA1照射によりて誘導されるアポトーシスはFas-Fas Ligand機構の下流のカスパーゼ、とくにカスパーゼ3の発現量に依存し、悪性T細胞株と健常CD4陽性T細胞のUVA1照射に対する感受性はカスパーゼの発現量の相違により決定されると考えた。
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