研究概要 |
幼若メラノサイトの分化に及ぼす因子を検討した。マウス神経冠培養系(primary cultule)とマウス神経冠細胞由来メラノサイト前駆細胞株を使用した。この前駆細胞株は当教室で樹立したもので、NCCmelb4とNCCmelb5の2種ある。前者はtyrosinase(TYR)陰性、DOPA反応陰性、endothelin B receptor(EDNBR)陰性の分化段階に留まる幼若な細胞で、メラノサイトの分化誘導因子を検討するのに適している。また後者は全て陽性の分化の進んだ細胞で、対照として使用した。この実験系に活性型ビタミンD_3(以下VD_3)を添加培養したところ、10^8Mより高濃度で増殖は抑制された。また、VD_3を添加培養すると、TYR, DOPA反応、EDNRBは陽性に変化し,電顕的観察でstageの進んだmelanomeの存在力確認された。さらにマウス神経冠細胞初代培養系においてもVD_3を添加培養すると、DOPA反応用性細胞の増加とEDNRBの発現を認めた。NCCmelb4にVP_3とEDNRBのリガンドであるendothelin3を添加培養すると、転写因子であるMITF(microphatalmia-associated transcliption factor)mRNAの発現がみられたが、VD_3単独の添加では見られなかった。以上のことから、活性型D_3はEDNRBの発現を誘導することでメラノサイト前駆細胞の分化を誘導することが証明された。このことは色素異常症の病態の解明や治療法に役立ち、さらには悪性黒色腫の分化誘導療法の治療薬としてVD_3を有用となりうる可能性があることを示している。次に、悪性腫瘍の分化、転移に関して検索されている弾力線維の成分であるエラスチンのレセプターがNCCmelb4に発現していることをみつけ、エラスチンが未分化メラノサイトの分化に関連しているかを検討した分化は電顕でメラノソームを観察し、光顕下で樹枝状突起の長さを測定した。またAramar Blue Assayで細胞数を数えた。エラスチンはprimary cultuleのメラノサイトおよびNCCmelb4を分化させるが増殖はさせなかった。最近、悪性腫瘍株にエラスチンのレセプターが発現しているとの報告がある。細胞の増殖なしに分化を促進するエラスチンは、悪性黒色腫の治療にも有用となりうる可能性があると考える。
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