研究概要 |
1.ヒト皮膚線維芽細胞に対する各種サイトカインの作用を研究したところ、TGF-βによるPDGF α-receptorのdown-regulationが示された。TGF-βで処理した線維芽細胞は、PDGF α-receptorのligandであるPDGF-AAに対する反応性が失われていた。 2.血管新生を制御する物質として、血管内皮細胞の増殖を抑えることが知られているmethotrexate(MTX)に着目し、その作用機序を調べた。Human umbilical vein endothelial cell(HUVEC)にMTXを加えてその増殖をみたところ、10^<-7>M以上の濃度で細胞増殖を抑制した。MTXを除くと細胞は再び増殖を開始したことから、MTXによる増殖抑制は細胞毒性によるものではないと思われた。次にHUVECにおける細胞接着分子の発現に対するMTXの影響を調べた。免疫組織化学染色により、10^<-6>MのMTXはICAM-1,VCAM-1の発現を抑制することが示され、western blotとELISAによっても、同様の作用が確認された。ただし、MTXによる抑制作用はICAM-1に対しては強力であったのに対し、VCAM-1に対しては弱かった。RT-PCRにより、MTXのICAM-1抑制作用がmRNAレベルで確認された。MTXは従来乾癬に対して効果を示すことが知られていたが、その作用機序は不明であった。乾癬においては血管新生が主な病態の一つとして認識されている。MTXは、血管新生と血管内皮細胞における細胞接着分子の発現を抑制することにより、乾癬に対して効果を示す可能性があると思われた。 3.ヒト皮膚線維芽細胞におけるVEGFの発現をwestern blotで検索した。PDGF,EGF,FGF,TGF-α,TGF-β,IL-1などを加えて調べたところ、TGF-βによるVEGFのupregulationが確認された。現在そのメカニズムを研究中である。
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