XPA遺伝子欠損(XPA-/-)マウスは、紫外線によるDNA損傷を修復できないため、色素性乾皮症患者と同様に、露光部皮膚に容易に皮膚癌を発生する。我々は、XPA(-/-)では、ハプテンに対する接触アレルギー感作が、UVB照射により局所的、全身的に著しく抑制されることを報告し、この紫外線免疫抑制がXPA(-/-)マウス及び色素性乾皮症患者の易発癌に関与している可能性を示唆してきた。今回は、腫瘍細胞に対する免疫学的拒絶反応への紫外線の影響を検討した。腫瘍細胞としては、UVB照射によりXPA(-/-)に発生した有棘細胞癌を使用した。細切した腫瘍組織片を無処置のXPA(-/-)マウス及びwild typeマウスに移植すると4週間後には完全に排除されて生着しない。一方、あらかじめ100-200mJ/cm^2のUVBを照射してから腫瘍細胞を移植すると、XPA(-/-)マウスでは50%で生着、増殖するのに対して、wild typeマウスでは10%のマウスでしか生着しない。有棘細胞癌から樹立した細胞株を用いた実験でも、UVB照射皮膚での生着率は、XPA(-/-)マウスで60%、wild typeマウスで4%であった。組織学的には、拒絶反応を示したwild typeマウスでは、強い炎症性細胞浸潤を伴って、腫瘍組織は壊死に陥る所見がみられた。一方、XPA(-/-)マウスでは、移植した腫瘍細胞が増殖する像が観察された。以上の結果から、紫外線によるDNA傷害の修復欠損は、遺伝子変異を誘導するのみならず、腫瘍免疫を著しく阻害して発癌を助長する可能性が強く示唆された。
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