研究概要 |
ここ数年の画像診断の進歩は目覚ましく,MRでの3D高分解能画像-CISS(constructive interference with steady state)-のシークエンスが使用されるようになって従来描出されなかった,内耳道内を走行する聴神経の一分枝である聴覚を司る蝸牛神経も描出可能となった.今回このシークエンスを用いて,聴力障害患者の蝸牛神経の形態変化をMRで評価した.病因によりその差があるかどうか,治療前後に形態の変化があるかどうかについて検討した.また同時に聴覚刺激を行いポジトロンCTで治療前後の脳血流を観察して,治療に反応する群と反応しなかった群においてこれらの検査で違いがあるかも検討してみた. 聴神経腫瘍やその他の腫瘍による難聴患者を除外した片側感応性難聴患者の両側内耳道のMRを施行した.軸位断像で3D高分解能画像CISS(実行厚0.7mm)を撮影した後,MPRのソフトを使用して7番,8番脳神経と脳神経の方向と垂直な方向で画面を0.7mmで再構成した.左右の顔面神経の断面の大きさを比較した.ムンプスなど小児期の感染による難聴患者において,蝸牛神経は健側と比較して患側では萎縮していた.両側とも顔面や鼓室神経の萎縮はなかった.一方,突発性難聴など血流障害などが原因と考えられている急性難聴患者では患側と健側との左右差は見られなかった. 突発性難聴患者においてpure soundを用いた聴覚刺激をポジトロンCTでおこなった.治療としてステロイドや高圧酸素投与を行ったが,治療前に比べて治療後聴力が改善した症例では優位に両側側頭葉の血流は増加していた.治療に反応する群と反応しなかった群においては,治療前の血流は側頭葉において優位さは見られなかったいままで症状でしかとらえられなかった病変を画像で描出可能となったことは、疾患を客観的に評価する点において有意義である。
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