研究概要 |
生体顕微鏡での肝および腫瘍血流を観察するための基礎実験と肝癌に対する肝動脈塞栓療法の基礎としての門脈末梢枝閉塞における肝類洞血流の変化を蛍光色素注入下の生体顕微鏡下に観察し以下の結果を得た.ラットを用いて,門脈内に30-35μの粒子(Aminex 50W-X4)を注入した.この大きさの粒子は門脈終末枝近辺に塞栓した.これを蛍光色素(Fluorescein sodium)注入下に生体顕微鏡にて観察し,ヴィデオに記録し解析した.粒子が門脈終末枝に塞栓し,周辺の門脈終末枝や類洞を介した側副血行が形成されるのが観察された.側副血行路は図1のように3種に分類できた.すなわち,終末枝周辺の肝類洞を介するもの(1),同一終末門脈枝の隣接する分枝から類洞を介するもの(2),隣接する異なった終末門脈枝から類洞を介するもの(3),の3種類である.これらの類洞を介する側副血行路は速やかに形成され塞栓部位末梢の終末門脈枝の血行が再建された.このような類洞が側副血行路になるという報告はこれまでになく,新しい知見と考えられた.肝癌の治療を目的とした動脈あるいは門脈塞栓術において,このような門脈終末枝の類洞を介する側副路を防止するような塞栓物質の注入方法や種類の選択が重要と考えられた.生体顕微鏡下での微小循環観察技術の確立と並行してマウスにおける転移性実験肝癌の作成を行い,その技術を確立した.また同時にラットにおいて原発性肝癌,境界病変の作成を行い,腫瘍血流の生体顕微鏡での観察,多段階発癌における腫瘍内血流の変化をin vivoで観察し,各種血管新生因子との関連について組織学的検討を行う予定である.また実験的研究と並行して肝硬変に伴う肝細胞性結節の予後と血流の関連を明らかにしその成果はRadiology誌に発表された.
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