研究概要 |
肝細胞癌の多段階発癌とそれにともなう結節内微小循環の変化の解析の基礎および対比を目的として蛍光生体顕微鏡によるマウス実験的転移性肝癌で発生初期における微小循環の解析を行った。Colon-26腫瘍細胞をBALB/cマウスの脾臓に注入し転移性肝癌を作成した。注入8-13日後に開腹し径1mm以下の肝癌とその周辺肝類洞の血行動態を観察した。形成初期には門脈枝を通じて腫瘍が栄養されるのが観察された。さらに成長した段階では、腫瘍内に拡張した類洞が見られないもの、腫瘍内に拡張・変形した類洞が存在するもの、腫瘍周辺に拡張・変形した類洞がみられるもの、の3種類の形態が観察された。組織学的にも同様の変化が確認された。腫瘍内類洞の血流は停滞・遅延し血流の方向が決定しがたいもの,周辺類洞から腫瘍内類洞に流入するものに大別できた.以上の結果から,腫瘍内血洞は既存の類洞が変化し形成される機序が推察された.また転移性肝癌の発生初期にはこれらの類洞を介する腫瘍栄養が存在するものと考えられたが,腫瘍の成長に伴い発達する腫瘍内血洞の血行支配については明らかにできなかった.今後経動脈性蛍光粒子注入による解析が必要と考えられた.同様の観察を,ウイスター系ラットに18週間のn-nitrosomorpholineの飲用で作成した,原発性肝癌,境界病変で比較検討した.境界病変から肝癌への進展に伴って類洞が変形・拡張し,不整な腫瘍内血洞へと変化することが明らかとなった.これらの実験に加えて,functional CTを用いたマウス腫瘍血管新生評価を行った.また臨床例でsingle-level dynamic CT during hepatic arteriograpy像と組織像の対比から転移性肝癌の微小循環を明らかにし,生体顕微鏡観察との比較を行った.
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