前年までに、大腸癌皮下移植モデルで、I131標識抗大腸癌モノクローナルA7抗体による放射免疫療法と2-methoxyestradiol(2-ME)経口投与による血管新生阻害療法の併用が、各々の単独治療よりも大きな治療を発揮することが示された。本年は、先ず同じモデルを用いて、別の血管新生阻害剤であるthalidomideでも同様か結果が得られることが示され、この手法の妥当性が追認された。次に、本研究の主目的である微小転移癌モデルにおいて検討した。ヌードマウスを麻酔下に開腹し、LS180細胞2x10^6個を経脾的に移植することによりヒト大腸癌細胞肝転移モデルを作成した。このモデルにおいては、移植1週後に数100μmの肝内腫瘍結節を形成し、2週後には数mmの大きさとなり、結節相互に融合し始める。このモデルにおいて、標識A7抗体の転移腫瘍への高度の特異的集積が確認され、さらに、抗体投与に先行して行われた血管新生阻害療法が、抗体の腫瘍集積に影響を与えないことが示された。また、転移腫瘍の大きさが小さいほど抗体の腫瘍集積性が高度であることも示された。これらは、血管新生阻害療法により腫瘍をdormancyに導いた後に、放射免疫療法でdormant細胞集団を根治するという本研究の方向性の妥当性を裏付ける結果である。次に、最大耐容投与量における放射免疫療法と血管新生阻害療法の治療併用効果を観察した。放射免疫療法と血管新生阻害療法は、いずれも単独治療で未治療の場合に比べ転移腫瘍増殖抑制効果を示した。さらに、両者の併用治療により、より顕著な治療効果が発揮されることが確認された。次に、I131と異なるβ線エネルギーを有するRe186で標識した抗体での放射免疫療法の効果を同じモデルで検討した結果、I131標識抗体よりも良好な治療効果が得られることも示された。次年度以降さらに詳細な検討を行う予定である。
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