1.大腸癌皮下移植モデル、肝転移モデルにおいて、I131標識抗大腸癌モノクローナルA7抗体による放射免疫療法と血管新生阻害療法(thalidomide、2-methoxyestradiol)の併用が、各々の単独治療よりも大きな治療を発揮することが示された。肝転移モデルにおいて、標識A7抗体の転移腫瘍への高度の特異的集積が確認され、さらに抗体投与に先行して行われた血管新生阻害療法が、抗体の腫瘍集積に影響を与えないことが示された。また、転移腫瘍の大きさが小さいほど抗体の腫瘍集積性が高度であることも示された。これらは、血管新生阻害療法により腫瘍をdormancyに導いた後に、放射免疫療法でdormant細胞集団を根治するという本研究の方向性の妥当性を裏付ける結果である。これらの薬剤による血管新生阻害療法は、放射免疫療法の主たる毒性である骨髄毒性に大きな影響を与えることなく併用可能であった。これらの検討により、微少残存癌が存在する状況下における補助療法としての放射免疫療法と血管新生阻害療法との併用療法の有用性が示唆された。 2.微小腫瘍が残存した患者における補助療法としてのβ線内照射療法の役割をさらに検討するため、I131より高いβ線エネルギーを有するRe186で標識した抗体での放射免疫療法の効果を肝転移モデルで検討した結果、I131標識抗体よりも良好な治療効果が得られた。また、同様に大腸癌腹膜播種モデルにおいてもRe186標識抗体の治療効果がより顕著であった。併用効果の増強作用は、Re186標識抗体を用いることによりさらに改善されるであろうと考えられた。 3.癌治療における治療前効果予測は、いわゆるテイラーメイド医療に深く関わっている問題である。内照射療法の施行前効果予測もその例に漏れない。^<99m>Tc-sestamibi等の放射性薬剤の集積状態が、治療に対する腫瘍の反応を反映するものであることが報告されている。効果予測に関わる因子を検討した結果、腫瘍組織内の体酸素状態によりこれらの放射性薬剤の腫瘍集積が低下することが見いだされた。
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