研究概要 |
胸部X線単純画像は,呼吸器系・循環器系疾患あるいは全身疾患に関する基礎的な検査法の一つとして,最も多く撮影される.しかし現在,X線CTによるマススクリーニングが行われるような状況下でもあり,胸部X線単純画像の位置づけは変わりつつある.すなわち胸部スクリーニング検査においては,もはや胸部X線単純画像による診断情報では満足されず,従来よりもコスト(費用,被ばく線量,検査の煩雑さなど)を掛けてでも精密検査に近い情報量が必要とされる. 我々は,このような"高コスト-高パフォーマンス・スクリーニング検査"という方向ではなく,コストにおいて従来の胸部X線単純画像の撮像とほとんど同じでありながら,新たに呼吸動態や心拍動の診断情報を付加できるスクリーニング撮像法と画像解析法の開発を進めてきた.この方法では,被検者の通常呼気時→最大吸気時→通常呼気時までの呼吸過程のすべてを動画対応フラットパネルX線ディテクターによって撮像し,呼吸動態情報を取得する.しかし,そのX線動画像だけを対象として診断することは,ともすれば無駄な情報が増えるだけで診断効率が悪い.そこで,そのX線動画像を対象として横隔膜や肺内構造の動きおよび肺の含気量などをコンピュータによって予め定量解析し,その結果を最大吸気時の静止画像と併せて診断する.そして,必要があればX線動画像も参照するというような検査システムを開発している. 2002年11月より本検査法の臨床試験を開始しており,たとえば,間質性肺炎の症例においてX線CTでは診断不可能な呼吸機能の一部が本検査法によって診断できることも示唆されている.さらに症例を増やして十分に検討しなければならないが,このような検査法が,慢性閉塞性肺疾患および心疾患,さらには肋骨や横隔膜下などの正常構造から見え隠れするような異常陰影の診断に有用であることを期待している.
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