研究課題
びまん性肺疾患は両側性に散布する微細陰影に特徴がある。一方でびまん性肺疾患のX線診断は主として胸部写真と肺HRCTによって行われる。両者は現在では相補的に使われるのが一般的である。微細陰影の内最も重要な所見は粒状影である。そこでびまん性粒状影を示す肺疾患の代表例について肺標本を解析し、肺既存構造と病変の関係について以下に要約するような結果を得た。その際本研究の初年度に得た肺実質の構築についての知見との関連性に注意した。1.肺血管中心性の分布:肺細血管は肺実質内の互いに隣接する複数の肺胞道を境する肺胞ドームに囲まれて分布する。この肺血管を中心に癌性リンパ管症、サルコイドーシス、悪性リンパ腫など肺リンパ路に沿って浸潤する疾患の病変が見られる。従って本病変は肺血管の延長上に分布し、しかも末梢血管の全周性の異常影として捉えうると想像される。2.傍肺細血管性の分布:肺胞道と肺胞からなる呼吸管の1つを病変が充満すると病変は1の場合と異なり、肺細血管の片側に位置する事となる。経気道性播種の性格を示す肺結核に見られる病変である。3.傍呼吸細気管支性:呼吸細気管支の肺胞開口部から始まると予想される病変で、びまん性汎細気管支炎や細葉中心性肺気腫を想定している。4.肺胞隔壁性:肺胞ドームとその両側の肺胞側壁を肥厚させ、肺胞ドームのネットワークを介して浸潤する病変で、細気管支肺胞上皮癌、特発性肺線維症で見られる。4は線状、粒網状影、さらにすりガラス状影となる病変である。肺実質内の肺胞隔壁、肺細血管の構築を意識した胸部写真とHRCTの読影技術の開発は未解決の問題を多く含みさらに検討を要す。
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