研究課題
MR Elastography(MRE)法は、生体表面に与えた数十から数百Hzの微細な振動が波として深部組織へ伝播する様子をMRlにて画像化し、振動波長が弾性率に応じて変化することを利用し弾性率を定量化する。組織弾性は腫瘍などの様々な疾患で変化するため組織性状を表す指標として診断に応用できるが、従来は触診による定性的な評価に限定され、MRE法による定量化は組織の僅かな変化を鑑別できる新しい診断法として注目される。通常のMRE法は画像収集に数分以上の時間を要するため、呼吸などの運動が問題とならない四肢や乳腺などに適用範囲が限定されている。本研究では呼吸停止下で撮影が可能な高速MRE法の開発を目的に、独自に考案した位相コントラストMRI撮影法の高速化技術をMREに応用する試みを進めている。本年度は、高速MRE撮影パルスシーケンスの開発を行うとともに、新しい振動装置の試作を行った。高速MRE撮影法の開発では、振動波の様子を画像化するためのMRE用傾斜磁場を前駆パルスとして備える独自のMRE撮影法を臨床用MRI装置に実装した。学内に導入された新型MRI装置を用いたため研究開発環境の整備に時間を要し、新しい撮影法の信号収集部分の実装は完了したが、MRE画像再構成のための処理部分は未完成である。しかし通常のMRE撮影法の実装は完了し、再構成したMRE画像が得られることを確認した。MRE画像データを解析し弾性率に変換するプログラムはシミュレーション画像を対象に開発し、通常のMRE法で得られたMRE画像に適用して弾性率を定量的に抽出できることを確認した。振動装置については、断続的な振動によって進行波を発生させる従来法では振動波が十分な深度まで伝播しないという問題があったため、連続的な振動により定在波を発生させる装置を設計・試作した。撮影装置との同期用制御回路の電気的ノイズが画像に混入するため、現在ノイズが低減するよう改良を進めている。
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