放射性微小球を用いた肝臓腫瘍に対する内照射療法は海外では既に臨床応用されているが、その治療効果や組織内での微小球の動態等の評価は充分とは言えない。京都大学医学部では京都大学工学部との共同研究により高い化学耐久性と真球性を有する純粋なY_2O_3微小球の開発を進めており、家兎肝腫瘍モデルを用いて前臨床研究を行った。 平成15年度の成果としては 放射性微小球の注入による抗腫瘍効果 現在までに6羽の家兎肝腫瘍モデルに対して131-173MBqの放射化したY_2O_3微小球の注入実験を行い、うち23腫瘍が評価可能であった。対照群として同時期に観察を行った家兎腫瘍モデル植え込みのみの無治療群(腫瘍最大径平均29.3mm)、非放射化微小球注入群(腫瘍最大径平均25.3mm)との比較で、放射化微小球を注入群(腫瘍最大径平均11.7mm)では、有意な腫瘍増殖抑制効果を示した。また放射性微小球を注入した群では、肺への転移や腹腔内播種などの腫瘍の二次的な進展も認められなかった。 放射性微小球の注入における家兎肝臓の組織学的検討 屠殺後の組織学的検討では、放射性微小球は、腫瘍部および正常部の動脈内のみに観察された。短期の観察ではあるが、放射性肝炎などの所見は得られなかった。 小径微小球注入試験 本研究に用いられてきた微小球の直径は20-30μmであるが、より直径の小さいものの方が、注入臓器内分布が改善するとの仮説がある。肝臓内をすり抜けずに停滞し、内照射療法が可能となる最適な微小球直径を検討中である。今回、非放射化微小球で10-15μmと15-20μmの微小球を準備し、注入試験を行った。現在のところ、組織学的には、20-30μm直径の微小球注入時と同様に肝臓の類洞や胆管系、静脈系には微小球は認められず、肺への逸脱は観察されていない。
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