研究概要 |
シクロオキシゲナーゼ2(COX-2)はアラキドン酸からプロスタグランジンを産生する酵素であり,腫瘍の増殖と血管新生に及ぼす機能が注目されている.平成15年度の研究計画から、ヒト血管肉腫細胞(ISO-HAS)を用いて放射線とCOX-2選択的阻害剤であるNS-398の併用効果,COX-2およびVEGF蛋白発現との関連について解析した.手法は、ヒト血管肉腫細胞(ISO-HAS)を用いてNS-398の有無による細胞生存率曲線の変化,ウェスタンブロット法によるCOX-2およびVEGF蛋白発現,および細胞外液中のプロスタグランジンE2の定量実験を行った.その結果、NS-398により生存率は低下した.LQモデルを用いるとNS-398の有無でα/βはそれぞれ5.27,1.55,DOは1.54,2.05であった.放射線照射によって線量依存性にVEGF蛋白発現の上昇が見られ,NS-398の併用によってVEGFの上昇は抑制された.プロスタグランジンE2濃度はNS-398によって抑制されたが照射線量との関連は見られなかった.従って、NS-398は放射線との併用効果があり,その細胞増殖抑制効果にはVEGFが関与していると考えられる. 一方腫瘍細胞と異なり放射線感受性の低い、分化神経細胞(非分裂性)におけるシクロオキシゲナーゼ2およびその阻害剤の効果を解明する目的から、ラット海馬初期培養系において、脳型カルボキシペプチダーゼBによるベータアミロイド42オリゴマー解離作用と神経細胞死(アポトーシス)誘発の系において解析を試みた。その結果COX-2およびその選択的阻害のアッセイ系には変動を認めず、またオリゴマー解離系とは独立した選択的細胞死の制御機構であることが示唆された。
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