胸部検診の患者においてCT検査を施行し、自覚症状のない若年者肺気腫患者を中心として肺気力の存在を検討した。従来の喫煙者における肺気腫の発症頻度は剖検例を中心に集積され、診断は胸部X線写真と呼吸機能でなされている。ところがこの診断基準で診断される肺気腫はかなり症状が進んだ、いわば完成された肺気腫であり、反対に症状がなければCTは施行されず、従って診断されることはない。CTは呼吸機能が正常である場合にも肺気腫を示す低吸収域を認めることは日常しばしば経験されることであり、肺気腫の初期病変を表し得る有効な手段である。本研究はCTによる肺癌検診の2次検診でCT検査を施行した患者において、喫煙との関連で肺気腫の存在、年齢、亜分類を正確に把握し、呼吸機能で肺気腫が診断される以前に、すなわち症状発現以前に、病態が把握され、さらに将来予想が可能となることを前提に進めている。 さらには剖検や手術で摘出された肺標本から肺気腫病変をCT画像と対比するために検討を加えている。この点も従来の病理学的検索では画像の理解を目的にはされておらず、新しい展開が期待される。 また、本学で運用を開始している遠隔医療システムにおいて、肺気腫のCT診断を検討したところ有効であったことから、論文として日本胸部臨床(2003年)およびRadiation Medicine(2004年印刷中)で発表した。このことは画像読影の専門医不在の医療施設でも的確な肺気腫診断がなされることの可能性が示された。
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