研究概要 |
平成14年度〜平成15年度;放射線照射後の人悪性リンパ腫細胞、OCI/AML-2(P53+/+)、OCI/M2(P53-/-)細胞に関して、アポトーシス発生における微量元素動態をmicro PIXE cameraを用いて研究し、アポトーシス初期に、細胞質に点状の高集積が発生する事、アポトーシス発生後期に、核中にカルシウムの高集積が発生する事を見出した。これに関しては、アポトーシス実行機構と密接な関係が認められ、アポトーシス発生初期の鉄の点状集積に関しては、ミトコンドリアから細胞質内へのサイトクロームCと細胞内Feの点状集積が経時的に一致し、ミトコンドリアからのサイトクロームC放出をBCL-2の発言によって抑制した所、細胞内:Feの点状集積が消失した事から、ミトコンドリアから細胞質内へのサイトクロームC放出を表していると考えられた。また、アポトーシス発生後期の核中のカルシウムの集積増強に関しては、Caspase-3,-9活性との関連性が認められ、Caspase-3,-9を抑制すると、アポトーシス発生後期における核中のカルシウム集積も消失する事から、同カルシウムの核中におけるカルシウム集積増強は、Caspase-3,-9を表しているものと考えられた。 平成15年度〜平成16年度:鉄とCytochrome-C動態、カルシウムとCaspase-3,-9との関連性を、マウス実験腫瘍L1210,L1210 radioresistant variantに関して、において、確認する実験を行った。IN VIVOにおいても、Cytochrome-Cと鉄動態との関連性、カルシウム動態とCaspase-3,-9との関連性は、認められたが、逆に、Cytochrome-C尾静脈投与による鉄動態の変化や、カルシウム投与によるCaspase-3,-9の変化は認められなかった。これに関しては、鉄剤やカルシウムを尾静脈より投与しても、腫瘍に限局的に高濃度に作用しないためと考えられた。この問題を解決するためには、放射線により内容を放出する、皮下注、あるいは尾静脈より投与可能なマイクロカプセルの開発が必要不可欠と考えた。 平成16年度〜平成17年度:アルギン酸が放射線により収縮する事、ヒアルロン酸が放射線で発生したROSにより分解する事の二点に着目し、アルギン酸とヒアルロン酸からなるマイクロカプセルを考案した。そのマイクロカプセルの素材決定のため、アルギン酸とヒアルロン酸を種々の割合で決定し、カルシウム下で重合させると、アルギン酸とヒアルロン酸の割合が、重量比2:1の時に、最も効率的に放射線により内容を放出する事を見出した。
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