研究概要 |
1.生存シグナル阻害剤による放射線増感効果 チロシンキナーゼ阻害剤であるGenisteinならびにEGFRの特異的阻害剤であるAG1478を照射に併用すると、生存シグナルであるp42/p44ERKとAKT/PKBの照射による活性化が抑制され,放射線感受性が増強した。しかし、AG1478による増感効果の方が小さかった。また、変異型p53細胞株では、野生型p53細胞よりもその活性化を効率よく抑制し増感率が高かった。さらに、MEK阻害剤であるPD98059ならびにPI3K阻害剤であるLY29002についてもp53のstatusにかかわらず放射線増感が得られた。 2.分子標的薬剤を用いた放射線増感効果 1)HSP90シャペロンコンプレックスの阻害作用を有するradicicolには放射線増感効果が認められ、変異型p53細胞では放射線単独では認められないアポトーシスが誘導された。また、放射線照射で誘導されるMARK(p42/p44 ERK)の活性化が、radicicolの併用により抑制されており、放射線感受性増感の機序の一因と考えられた。 2)ヒストン脱アセチル化阻害剤であるtrichostatin Aの放射線増感効果にはp53のstatusの違いにより差異があるものの、p53が野性型、変異型を問わず認められた。増感の機序にはp53野性型の細胞のみならず、変異型の細胞でもcaspasesの活性化を伴うアポトーシス誘導が認められた。また、Raf-1の分解とERKの活性化阻害がtrichostatin Aの併用で認められ、caspase3の活性化に加え、Raf-ERKシグナル伝達経路の活性抑制も増感機序の一因と考えられた。
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