(研究目的)本研究は肝悪性腫癌に対し、最小限の副作用で最大限の効果が期待できる低侵襲的閉鎖循環下抗癌剤灌流療法の開発および治療システムの完成を目指している。(研究実施)研究代表者の村田がスウェーデン国にてラットを用いて閉鎖循環下抗癌剤灌流モデルを作成した。次の段階としてヒトと同じ器材を使用できるブタを現在までに17匹を用いて肝の閉鎖循環下抗癌剤灌流療法の実験を施行した。経皮経肝的に肝の門脈枝を穿刺、バルーンカテーテルを門脈本幹に進めた。次ぎに大腿静脈よりダブルバルーンカテーテルを挿入し、肝の閉鎖循環システムを作成した。下大静脈を閉塞した部位より尾側の血液および門脈閉塞部位より尾側の血液を人工心肺装置を用いて右内頸静脈へ循環させ、肝動脈から抗癌剤を注入し、門脈閉塞部位より頭側から抗癌剤を吸引し灌流療法を30分間行った。同時に血圧、心電図を計測し手技の安全性の評価を行った。(結果と考察)ブタ17匹の実験の中で最初の12匹はバルーンカテーテルのサイズの不備やシースの不備のため実験途中で血圧降下が生じ、この内7匹で実験を中途で断念した。最後の5匹は改良型の道具を用いて安全性が確保され、同時に灌流システムも機能し、実験は成功した。これにより、Interventional Radiologyの技術のみを用いた低侵襲的閉鎖循環下抗癌剤灌流療法システムが完成し、臨床応用への道を開いたが、さらに動物実験を繰り返し、安全性と有効性を研究していく必要性があるものと考えられた。
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