(研究目的)本研究は肝悪性腫瘍に対し、最小限の副作用で最大限の効果が期待できる低侵襲的閉鎖循環下抗癌剤灌流療法の開発および治療システムの完成を目指している。(研究実施)研究代表者の村田がラットを用いて閉鎖循環下抗癌剤灌流モデルを作成した。次の段階としてヒトと同じ器材を使用できるブタを用いて現在までに24匹を用いて肝の閉鎖循環下抗癌剤灌流療法の実験を施行した。経皮経肝的に肝の門脈枝を穿刺、バルーンカテーテルを門脈本幹に進め、続いて大腿静脈より下大静脈にダブルバルーンカテーテルを挿入し、肝の閉鎖循環システムを作成した。下大静脈を閉塞した部位より尾側の血液および門脈閉塞部位より尾側の血液は人工心肺装置を用いて右内頸静脈へ循環させ、肝動脈から抗癌剤を注入し、門脈閉塞部位より頭側から抗癌剤を吸引し灌流療法を30分間行った。同時に血圧、心電図を計測し手技の安全性の評価を行った。(結果と考察)ブタ24匹の実験の中で最初の12匹はバルーンカテーテルのサイズの不備やシースの不備のため実験途中で血圧降下が生じ、この内7匹で実験を中途で断念した。残り12匹の内10匹は改良型の道具を用いて安全性は確保され、同時に灌流システムも機能し、システム開発としての実験は成功した。現在はまだ2匹のみだが、閉鎖循環下抗癌剤灌流後、ブタを安楽死させ、直ちに肝・腸管を切除して病理学的に壊死や障害等の有無の評価を始めたところである。病理学的にも安全性が確認されれば、Interventional Radiologyの技術のみを用いた低侵襲的閉鎖循環下抗癌剤灌流療法システムが完成し、臨床応用への道を大きく一歩踏み出すことになる。
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